2026年7月18日
会員著書案内| 著者名 | 書名 | 出版社 | 出版年 |
|---|---|---|---|
| 鶴見良次 | 『ラテン語教育から英語教育へ』 | 開拓社 | 2026 |
【梗概】
本書は、イギリス近代において、「学校で勉強する」と言えば、おもに上層階級の子弟が文法学校(grammar school)やパブリック・スクールでラテン語を学ぶことであった時代から、徐々に、大衆の子供たちが慈善学校(charity school)や英語学校(English school)で母語たる英語を学ぶことを意味するようになる事情を明らかにすることを目的とする。
17世紀のピューリタン教育論者の母語(英語)中心主義の思想とその教育実践、その後、篤志家の慈善資金がジェントリーや中流階級の子弟のための文法学校、古典語学校から、庶民の子供に英語の読み書きや算数を教える18世紀前半の慈善学校へと移行する段階を経て、18世紀の英語学校の隆盛にいたる変遷を、長い間の英語教育の変容としてとらえる。
中核に据えたのは16世紀に始まるイギリスの宗教改革以降のラテン語教育の衰退と英語教育の興隆である。特にピューリタンのラテン語教育批判は本書の研究の歴史認識の要(かなめ)となった。ピューリタンにとって、ラテン語はもはや社会生活において役に立たないものであり、それと対照的にあらゆる人生の歩みに備えるうえで、英語の有用性はより一層輝きを増していた。上流階級の子弟のためのラテン語教育から始められたイギリスの文法学校の教育は、英語の読み書き能力に対する当時の人々の関心や期待のもとに、徐々に庶民にとって「役に立つ」英語教育中心のものへと変容してゆく。英語は、ピューリタン革命の時代から、「役に立つ」ことを運命付けられていたのかもしれない。
イギリス近代の言語教育の複雑な変容の事情を詳(つまび)らかにするべく、本書では、同時代の生徒や教師が実際に手にして用いた教科書や、おもにパンフレットのかたちで出版された教育論者の原テキストにできるだけ当たる。それによって、当時の教育とその議論を当時の人々の身になって追体験し、さまざまな教育事情の歴史的な焦点合わせを行う。
【目次】
序論
第I 部 ラテン語学校と英語学校
第1章 イギリス文法学校小史――生徒とラテン語カリキュラム
第2章 ラテン語学校から英語学校へ――中等教育の変容
第II部 ラテン語教育から英語教育へ
第3章 ラテン文法訳読と母語教育――ラテン語と英語の並行的な習得
第4章「ここ「ブリテン」の土地には「ブリテン」の種をまく」――母語重視の文
法家たち
第5章 ヴァナキュラーな古典の教科書――古典文学教育からイギリス文学教育へ
第III部 ピューリタンの言語教育改革論
第6章 「手段」としての言語――ピューリタン革命期のラテン語教育批判
第7章 ピューリタンの公教育構想と18世紀の慈善学校――大衆英語教育の曙
結論
あとがき
初出一覧
図版出典
文献一覧
人名索引