2025年5月26日
会員著書案内著者名 | 署名 | 出版社 | 出版年 |
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篠崎実、中野春夫編 | 『エリザベス朝演劇と娯楽文化』 | 三修社 | 2025年 |
【梗概】
科研費・基盤研究B「娯楽文化史からとらえるエリザベス朝演劇――社会変化が生みだす総合エンターテイメント」(2019~2022年度、課題番号19H01238)による研究成果をまとめたもの。
エリザベス朝の劇作品に目をやると、小唄の歌詞や踊りを指示するト書きや台詞、歌や踊りなどを複合的に用いる大道芸のパフォーマンス場面、さらには当時見世物として娯楽化されていたフェンシングの場面などが随所に組みこまれている。また、劇の台詞には、熊いじめや売春業、飲食業、ギャンブル、「怪物」の見世物についての言及や描写も頻繁に見られる。当該研究ではそうしたさまざまな娯楽文化の要素に着目して、それ自体娯楽文化を構成するエリザベス朝演劇が、他のさまざまな娯楽文化と関係を結んで、あるときは他形態の娯楽文化の影響を受け、あるときは他の娯楽文化に影響を与えるなどして、16、7世紀のイングランドの社会・文化を構成してきた、その様態を見極めることを課題とした。
本書には、そのために設定した7つの娯楽分野――(1)行商大道芸、(2)熊いじめ等動物虐待見世物、(3)売春、(4)居酒屋等飲食業、(5)小唄・ダンス、(6)ギャンブル、(7)怪物・狂気系見世物――それぞれの担当となった、篠崎実(千葉大学名誉教授)、岩田美喜(立教大学教授)、末廣幹(専修大学教授)、土井雅之(関西学院大学准教授)、中野春夫(学習院大学教授)、丹羽佐紀(鹿児島大学教授)、松岡浩史(熊本大学准教授)による論攷をおさめた。
【目次】
まえがき 篠崎実
序章 イントロダクション エリザベス朝イングランド社会の娯楽文化 中野春夫
第一章 大道芸 『ヴォルポーネ』と大道薬売りのパフォーマンス 篠崎 実
第二章 熊いじめ・牛いじめ シェイクスピア劇における熊いじめのイメージとその射程 岩田美喜
第三章 買春 『尺には尺を』における不可視の売春と可視化される娼婦 末廣 幹
第四章 飲食店業 ロンドンの飲食店文化から考える――クイックリーのタヴァーンとその客たち 土井雅之
第五章 小唄 エリザベス朝演劇の小唄 中野春夫
第六章 ギャンブル 『女よ、女に心せよ』におけるチェスと仮面劇の関係――家父長制からの解放と偶然の誤算 丹羽佐紀
第七章 怪物・狂気 狂気の見世物、見世物の狂気――『リア王』におけるベドラム慈善院の表象 松岡浩史
索引
編著者紹介