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2026年8月20日

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著者名 書名 出版社 出版年
伊藤淑子、倉橋洋子、小田敦子、真田満編著 『エコノミーから19世紀アメリカ文学を読む――空間の拡大と社会の変容』 彩流社 2026

【梗概】
 本論集は、作家の経済状態・経済観念と創作活動、さらに家政を扱った『19世紀アメリカ作家たちとエコノミー』(2023)の続編である。今回は、前作の視点を継承しつつ、エコノミーをより広く社会的・歴史的に捉え、開拓や交通革命による空間の拡大や社会の変容と、19世紀アメリカ文学との関係を重視した。エコノミーという概念が孕む、所有、労働、教育、文化的創造、自然環境など、金銭に還元できない諸問題に作家がどう挑んだかを論じ、時代の実相を浮かび上がらせている。
 第一部は、自然と西部空間をめぐるエコノミー論を収め、西部開拓の功罪を論じる。カークランドの『新しい家』論は、西部開拓を女性の視点から描出した歴史的、文学的重要性を指摘する。『ジュリアス・ロドマン』論は、ポーの文学性で探検記を改変したこの未完のロッキー山脈冒険譚を、自然と人工の融合を描く作品の先駆として論じる。ホーソーンの「ラパチーニの娘」論は、同作品と民主党政権による先住民強制移住政策との構図上のアナロジーに着目し、政策への批判を読み解く。エマソン論は『英国国民性』と『処世論』に、英国経済批判から自然に基づく道徳的なエコノミーの構想を見る。
 第二部は、空間の拡大に伴う知識の拡大や価値観の変容に焦点をあてる。ソローの『ウォールデン』論は、「エコノミー」概念をリンネからダーウィンへと科学の発展に応じて論じる。ダグラス論は、大西洋奴隷貿易に関わる海洋と船舶のイメージが、自由への憧れ、英国での経験とも重なり、自己確立の象徴に変容する過程をたどる。オルコットの『若草物語』論は、劇中劇「魔女の呪い」にフラーの男女の変革論の影響を読み取る。ストッダードの『モーガソン家の人びと』論は、主人公カッサンドラの成長過程にアメリカにおけるピューリタニズムの言説と資本主義の発展を重ね合わせる。
 第三部は社会構造の変容を扱う。メルヴィルの『イスラエル・ポッター』論は、エコノミーと摂理が同義であることから、近代の経済活動において国家運営が摂理と読み替えられる様を論じる。W・D・ハウェルズの『新興勢力の冒険』は、男性中心の経済のプロットと、女性の領域とされた家政との結びつきを分析する。ジェイムズの『抗議』論は、貴族が所有する絵画の国外流出をめぐり、グローバル資本主義による地政学的不安を描く作品の先見性を論じる。
 第四部は、近代化に伴うエコノミーと文学的想像力の変容を扱う。メルヴィルの『レッドバーン』論は、米英を往復する主人公から、「ディプティック」形式の必然性と経済性を読み解く。ジェイムズの『ある婦人の肖像』論は、電信や写真などの技術革新による時空間の圧縮がもたらした加速文化の心理的影響を論じる。トウェイン論は、ペイジ式自動植字機への投資の失敗が晩年の主題へとつながったことを指摘し、テクノロジーと人間の関係を検証する。

【目次】

まえがき

第一部 広がりゆく西部の功罪
第1章 女たちのフロンティア・エコノミー
  ──カークランドの『新しい家』における西部生活指南 (城戸光世)
第2章 荒野と芸術
  ──エドガー・アラン・ポーの『ジュリアス・ロドマンの日記』(野口啓子)
第3章 ホーソーン「ラパチーニの娘」の構図にみるインディアン強制移住批判
  ──搾取、隔離、経済的自立の不可能性(倉橋洋子)
第4章 自然のように経済的な道徳性
  ──エマソンの『英国国民性』と『処世論』(小田敦子)

第二部 新たな価値の出現
第5章 エコノミーからエコロジーへ
  ──ソローにおける環境意識の変容(高橋 勤)
第6章 隷属の地から自由の海へ
  ──フレデリック・ダグラスと自己所有権/自己決定権(朴 珣英)
第7章 「イタリア人のような外見、イギリス人のような装い、アメリカ人のような独立性」
  ──ルイーザ・M・オルコット『若草物語』の「呪い」の戦略(髙尾直知)
第8章 ストッダード『モーガソン家の人びと』にみる経済的環境の変化と女性の成長(伊藤淑子)

第三部 社会の変容
第9章 メルヴィル『イスラエル・ポッター』に織り込まれたエコノミーの概念(真田 満)
第10章 W・D・ハウェルズ『新興勢力の冒険』に描かれたエコノミー (杉山直子)
第11章 ヘンリー・ジェイムズの『抗議』にみる市場と拡大する空間(竹井智子)

第四部 文学的想像力の脈動
第12章 ゆきてかえりし物語
  ──メルヴィル『レッドバーン』のディプティック的構造と創作の経済性(西谷拓哉)
第13章 加速の文化とヘンリー・ジェイムズ
  ──『ある婦人の肖像』にみる「時間─空間圧縮」の表象(中村善雄)
第14章 マーク・トウェインとペイジ式自動植字機
  ──人間の創意と愚かさの記念碑(有馬容子)

あとがき
図版出典
索引
執筆者紹介

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