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2025年4月27日

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著者名 署名 出版社 出版年
野口啓子監修/池野みさお・山口ヨシ子編著 『アメリカ文学にみる女性冒険者たち』 彩流社 2025年

【梗概】
 「アメリカ文学にみる女性冒険者たち」と題した本書は、アメリカ女性作家の手になる作品を取り上げ、「冒険」をテーマに読み直そうとした試みである。「冒険」というと、人跡未踏の地への探検であったり、危険が潜む荒野への旅であったり、あるいはまた「敵対的」な種族や国家との戦いを想起させ、冒険文学は伝統的に男性が占有する領域とされてきた。このような文学状況にあって、本書は女性作家が描く作品のなかに「冒険性」を追究し、そこに込められた女性作家または女性主人公の冒険の意義を深く分析しようとした。ここでいう「冒険」には、現実の物理的冒険だけではなく、知的・心理的冒険や想像上の冒険も含まれている。女性(作家)がどのような画期的なことに取り組んだのか、それまで女性には閉ざされてきた世界の扉をどのように果敢に開けようとしたのか、どのように勇猛に未知の領域に踏み込もうとしたのか、個別の作品を通して検証している。
 第I部「新しい世界を切り拓く女性作家たち」では、スザンナ・ローソン、マーガレット・フラー、ルイザ・メイ・オルコット、ケイト・ショパン、フラナリー・オコナー、レイチェル・カーソンを取り上げ、主として作家の画期的試みに焦点を当てている。第II部「「男の世界」に挑むヒロインたち」ではE・D・E・N・サウスワース、サラ・オーン・ジュエット、ウィラ・キャザー、エレン・グラスゴー、マーガレット・ミッチェル、マキシン・ホン・キングストン、トニ・モリスンを取り上げ、主として彼女たちが描いたヒロインに焦点を当て、南北戦争を生き抜いたフェミニスト、医者を目指したニューイングランドの娘、大地と格闘した女性、新旧世界の狭間を生きたアジア系アメリカ人、奴隷制という苛酷な経験を乗り越えようとしたアフリカ系アメリカ人の軌跡を辿っている。

【目次】
第I部 新しい世界を切り拓く女性作家たち
 第1章 新しいメロドラマの創出 ──ローソン『シャーロット・テンプル』(野口啓子)
 第2章 ヨーロッパから革命の戦乱を伝える──フラー「海外特派員報告」(伊藤淑子)
 第3章 ヒロインは二度殺される──オルコット『長く宿命的な愛の追跡』(羽澄直子)
 第4章 ワーグナーを聴く女性たち──ショパン『目覚め』(相木裕史)
 第5章 烈しく攻むる作家は冒険に挑む──オコナーの短編小説を中心に(渡辺佳余子)
 第6章 女性科学者の文明社会への申し立て
     ──カーソン『沈黙の春』と『センス・オブ・ワンダー』を中心に(西尾ななえ)
第Ⅱ部 「男の世界」に挑むヒロインたち
 第7章 フェミニストの南北戦争──サウスワース『ブリトマート』(山口ヨシ子)
 第8章 医師を目指す少女の旅──ジュエット『田舎医師』(須藤彩子)
 第9章 大地からの祝福と赦し──キャザー『おお、開拓者たちよ!』(小倉咲)
 第10章 未来に希望を託すヒロイン──グラスゴー『不毛の大地』(大西由里子)
 第11章 実業家として新境地を切り拓く女性──ミッチェル『風と共に去りぬ』(矢島里奈)
 第12章 伝説の女武者からストーリー・テラーへ
     ──キングストン『チャイナタウンの女武者』(池野みさお)
 第13章 痛みを超えた探求──モリスン『ビラヴィド』(片山里沙子)

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