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2026年5月28日

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著者名 書名 出版社 出版年
日本ハーディ協会編 『トマス・ハーディを読む 文学の可能性を求めて』 音羽書房鶴見書房 2026

【梗概】
 日本ハーディ協会は2007年に、創立50周年記念論文集として『トマス・ハーディ全貌』を刊行しました。これに続き、創立70周年を迎えるに際して、本論文集を企画し、上梓しました。本論文集は、構成からも分かるように、『ハーディ全貌』同様、包括的かつ啓蒙的な論文集を目指しましたが、前論文集がハーディの全作品を完全網羅的に扱うことを志向したのに対し、本論文集では作品論の章を抑え、テーマ別批評とコラムに多くの執筆者を当てています。コラムは協会外から阿部公彦(東京大学)、岡和田晃(文芸評論家)、小川公代(上智大学)、小野俊太郎(文芸評論家)の四氏を執筆者として迎えています。
 各論に先立ち、ハーディとその時代を恋愛、結婚、教育、階級から説き起こした「序論」に続き、「人生」において、ハーディの伝記研究の直近の進展が辿られる(1章)。
 「長編小説」では、8論文で6小説が扱われる。クリムの異様な野心の欠如から結末の異様な不毛さまで論じ(2章)、また、レトリックから時の終末と再生の物語として読む(3章)、2つの『帰郷』論。「冗談」からの読み直しにより、共生の倫理を見出そうする『カスターブリッジの町長』論(4章)。頻出するアンチクライマックスから結末を考察する『森林地の人々』論(5章)。テスの手紙の沈黙こそがセクシュアリティの抑圧を暴くとし(6章)、またテスの匿名性の内側に特殊性という「実体」の存在を見る(7章)、2つの『テス』論。人間主体とモノと見ることの関係を問う『ジュード』論(8章)。反復が女性の願望によるとする『恋の霊』論(9章)。
 「中・短編小説」では、中編冒険小説『ウェスト・ポーリー探検記』を水源、法、暴力、戦争、投機などで横滑りに読み(10章)、『貴婦人たちの物語』を女性たちに時空・性差を超えさせる短編集とする(11章)。  「詩」では、ジプシー言説から復讐詩「神聖冒涜」を精読し(12章)、詩集『冬の言葉』から初期の詩まで遡り、一貫する形式・内容に考察をめぐらし(13章)、ハーディ詩の物語性に、ハーディ小説との相同的構造を見出す(23章)。
「テーマ別批評」では以下のように多彩なテーマが提供される。14章「本文(ほんもん)改変」:その生成論的読解を実践する。15章「プロフェッショナリズム」:その進展をハーディの自伝に辿る。16章「イングリッシュネス」:その田舎のあり様をカントリーハウスとコテッジに見る。17章「農村家族史」:『ジュード』を家族史的小説として読む。18章「科学時代の小説」:ハーディ/ダーウィンとゾラ/ベルナールの比較論考を行う。19章「人類学と民俗学」:両者と社会進化論との関わりをハーディとの関連で示す。20章「動物」:進化論から発するハーディの動物愛護と改良主義を論証する。21章「演劇」:小説の戯曲化から『覇王たち』まで詳論する。22章「映画」:映画『日陰のふたり』(『ジュード』原作)と違い、『めぐり逢う大地』(『町長』原作)と『トリシュナ』(『テス』原作)は他国に舞台を移しており、その翻案で生じる変化を論じる。
 論文の章の間に配されたコラムでは、エドマンド・ゴスとの親交(コラム1)、ヘンチャードと手書き文書(コラム2)、ヘンチャードの妻売り(コラム3)、『テス』第14章の“your church”(コラム4)、もうひとりのドーセットの小説家T・F・ポウイス(コラム5)、ハーディと牧歌・牛乳・オルガン・路上での出会い(コラム6)、『ラッパ隊長』のアイオロスのハープ(コラム7)、ウルフとの共通性としての両性具有性(コラム8)、翻訳ソフトと文学的精読(コラム9)、雑談に止まらないゴシップの力(コラム10)が語られる。
 巻末には、ハーディ関連の書誌、年譜、日本ハーディ協会大会の記録が収録されている。

【目次】
序論・・・鮎澤 乗光
I. 人生
1 ハーディの伝記・・・永松 京子
コラム1 トマス・ハーディとエドマンド・ゴスの親交とその意義・・・ 松井 豊次
II. 長編小説
2 The Return of “the Unnatural”・・・永富 友海
3 「時」の終末と再生の物語―『帰郷』のレトリックを読む・・・清水 伊津代
コラム2 トマス・ハーディのこだわりポイント・・・ 阿部 公彦
4 『カスターブリッジの町長』と冗談の倫理・・・原 雅樹
コラム3 『キャスタブリッジの町長』の「妻売り」・・・鮎澤 乗光
5 『森林地の人々』におけるアンチクライマックス・・・新妻 昭彦 6 『ダーバヴィル家のテス』の手紙からヴィクトリア朝のセクシュアリティを読む・・・高橋 路子
7 「乙女の口は冷たく―『ダーバヴィル家のテス』における匿名性と特殊性、および「無音」の「実体」・・・木島 菜菜子
コラム4 テスの十字架と「あなたのいる教会」・・・向井 秀忠
8 「抜け殻」と化す『日陰者ジュード』の世界―主体とモノが出会う接触面・・・亀澤 美由紀
9 小説テクストは誰の物語を語るのか―『恋の霊』の「繰り返し」が明らかにするもの・・・鈴木 淳
コラム5 椅子から飛び上がったハーディ・・・岡和田 晃
III. 中・短編小説
10 洞窟の底が揺れるとき―トマス・ハーディの忘れられた冒険譚・・・石井 有希子
11 短編集『貴婦人たちの物語』―時代を超える女性たち・・・宮崎 隆義
コラム6 ハーディへの夢想・・・小野 俊太郎
IV. 詩
12 「神聖冒瀆」とジプシー―穢れの概念を中心に・・・永盛 明美
13 冬の言葉―ハーディの詩・・・藤田 繁
コラム7 アイオロスのハープ・・・渡 千鶴子
V. テーマ別批評
14 ハーディと本文改変―コンテクストからテクストへ・・・上原 早苗
15 『トマス・ハーディ伝』にみる小説家ハーディのプロフェッショナリズム・・・麻畠 徳子
16 ハーディと田舎のイングリッシュネス―カントリーハウスとコテッジというホーム・・・金子 幸男
コラム8 ハーディとウルフの両性具有性・・・小川 公代
17 ハーディと農村社会の家族・・・丹野 海晴
18 科学時代における小説―ハーディとゾラ・・・清宮 倫子
コラム9 翻訳と精読・・・山内 政樹
19 文明という抑圧装置―トマス・ハーディとヴィクトリア朝の人類学と民俗学・・・ 唐戸 信嘉
20 ハーディと動物・・・福原 俊平
コラム10 ハーディ小説におけるゴシップの力 ・・・橋本 史帆
21 ハーディと演劇―制度・倫理・象徴空間の交錯・・・今村 紅子
22 ウェセックスを飛び出して―マイケル・ウィンターボトムのハーディ映画を考える・・・工藤 紅
VI. ハーディの詩ふたたび
23 ハーディの詩における物語性・・・玉井 暲

あとがき・・・金子 幸男
ハーディ書誌・・・原 雅樹
トマス・ハーディ年譜・・・橋本 史帆
日本ハーディ協会年次大会一覧・・・金子 幸男
索引
執筆者一覧

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