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2025年12月5日

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著者名 署名 出版社 出版年
都地沙央里 編著 『英国の書物出版文化史――著者、出版業者、読者との関係から』 開文社 2025年

【梗概】
 本書は、活版印刷術の黎明期から20世紀に至る500年余りの期間を対象に、それぞれの時代を代表する作品を取り上げ、それらを著者・印刷者・出版者・読者など、テクストと関わる人々との関係から個別かつ具体的に記述する概説書である。
 本書の構成を概観すると、第一章で口承文化の時代から20世紀まで、著者の立場と権利の発展を俯瞰した後、第二章でマロリーの『アーサー王物語』、第三章でシドニーの『アーケイディア』、第四章でバイロンの『貴公子ハロルドの巡礼』、第五章で作者不詳の『狐物語』、そして第六章ではアメリカの出版事情も考察に含めながら、T. S. エリオットの『荒地』がその当時の著者性や出版文化を具現する代表例として論じられる。
 取り上げられた作家・作品は限られてはいるが、時代折々に紡がれる本文編集や出版事情の物語を通史的に垣間見ることできるように意図されている。
本書を通して、書物史研究の興味深さの一端を読者の皆様に味わっていただければ、幸いである。

【目次】
はじめに
第一章 著者意識と著作権・版権から英国書物出版史を概観する(都地沙央里)
第二章 キャクストン版『アーサー王物語』とためらう奥書題 (le morte Darthur) (向井剛)
第三章 シドニーの『アーケイディア』と16世紀散文作品の出版事情 (村里好俊)
第四章 人口、識字率、印刷技術――『貴公子ハロルドの巡礼』第一、二編重版とコンテクストの変容 (山口裕美)
第五章 19世紀の『狐物語』に見る作品受容とテクスト観 (都地沙央里)
第六章 『荒地』出版をめぐるメディア文化――作者と出版社のマーケティング戦略 (池田栄一)
あとがき
事項、索引
人名・作品名 索引
執筆者紹介

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