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著者名 書名 出版社 出版年
伊藤詔子 監修著/新田玲子 編著 『カウンターナラティヴから語るアメリカ文学』 音羽書房鶴見書店 2012年

【内容】
アメリカ文学を語る指標として国民が共有しているように見えるナショナルナラティヴやマスターナラティヴ、またそれに対抗するカウンターナラティヴが多彩に入れ替わり解体・構築されることに着目し、多様なエスニシティ文学と、エコクリティシズム、映画、音楽との多文化ナラティヴの交錯を提示して、アメリカ文学が様々なナラティヴの反響空間であることを20の論文で考究する。序文でカウンターナラティヴ発生の源泉の一つとして、ソローの『ウォールデン』「市民の不服従」を貫くナラティヴの二〇世紀、二一世紀にいたる継承を論じ、著者らと縁の深いHiroshima言説へと接合する。

第一部の「カウンターナラティヴとアメリカン・ルネサンス」で、建国後の国民文学の淵源とみなされる3大作家の、ホーソーン『大理石の牧神』のカウンター・ロマンス性と、メルヴィル『水夫ビリー・バッド(秘話)』の軍事的言説に対抗する薔薇油の救済論、「ポーのキメラとゴシック・ネイチャー」を考察し、また女性作家チャイルドの『ニューヨークからの手紙』」に、男性の遊歩者(フラヌール)に対抗する「女性の遊歩者(フラヌーズ)」を見出している。さらにトウェイン後期作品が悪夢的に混乱し散逸したいきもののダーウィニズム的表象に満ち溢れている様相を分析し、ミューアがソローと同じく〈歩く行為〉で多くのマイノリティと出会いながら、両作家の人種意識の乖離を易出する。I部最後は作家論から一歩踏み出し、スコット・スロヴィックがエコクリティシズムの営為の真の学際性と希望を展望する。

第二部「エスニシティとジェンダーにみるカウンターナラティヴ」ではフィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』、フォークナー『八月の光』と『響きと怒り』、モリスン『ビラヴド』など国民的テキストを論じ、人種・階級・ジェンダーの境界消失と視点の深化と反転を探る。さらに西部へ眼を転じスタインベックの『真珠』などメキシコもの3作の「変容する銃の表象」を検証し、日系三世デイヴィッド・マスモト『桃への墓碑銘』の〈しゃがむ〉行為から、身体の政治性とアメリカ農法への対抗性を考察し、さらにアナーヤの越境とポストコロニアリズムとマジックリアリズムを、アードリックのノース・ダコタ作品群の、〈征服の歴史〉に対抗するポリフォニックな声を辿っている。

第三部「カウンターナラティヴの新たなる展開」では日系アメリカ作家オオツカの『天皇が神だったころ』でトパーズからグアンタナモ湾にむかう記憶とトラウマを歴史的に検証する。アレクシーの「ウラニウム鉱山とサーモン」、東西の自然観の融合をみせるゲーリー・スナイダーの曼荼羅を考察し、西洋キリスト教文化と東洋思想の融合、核時代のレトリックを検討する。最後にナラティヴの戦場でもある戦争映画と、ポストモダン・ユダヤ系アメリカ作家を分析し、他者と未来に開かれた、語りえないものを語るカンターナラティヴを明らかにしている。


【目次】
まえがき−ソロー、カーソン、広島 …伊藤詔子
T カウンターナラティヴとアメリカン・ルネサンス
廃墟のロマンス/ロマンスの廃墟−ホーソーンのイタリア旅行記にみるアメリカの未来図 …城戸光世
『水夫ビリー・バッド(秘話) 』の終え方−薔薇と水夫によるビリー救済 …大島由起子
二つの迷宮をさまよう女性−チャイルドの『ニューヨークからの手紙』 …辻祥子
ポーのキメラ(幻獣)とゴシック・ネイチャー−いきもの表象の多層構造をめぐって …伊藤詔子
犬の天国と人の地獄−トウェインと犬を巡る言説について …辻和彦
ミューアとソローにみるマイノリティの受容と認識−アフリカンアメリカンとネイティヴアメリカンを中心に …真野剛
エコクリティシズムの希望−環境批評と人文諸科学の未来にむけて …スコット・H・スロヴィック

U エスニシティとジェンダーにみるカウンターナラティヴ
ギャツビー、アメリカ人になる−フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』はなぜグレートか …杉野健太郎
旧南部の幻影−フォークナーの『八月の光』における人種・階級・ジェンダーの境界消失 …大地真介
変容する銃の表象−スタインベックの『真珠』の結末を巡って …中島美智子
〈しゃがむ〉行為の意味するもの−マスモトの『桃への墓碑銘』を中心に…岸野英美
太陽の道とマジックリアリズム−アナーヤの越境とポストコロニアリズム …水野敦子
土地の記憶を語る−アードリックのノース・ダコタ作品群 …横田由理
記憶のナラティ−モリスンの『ビラヴィド』における女性たちの声…早瀬博範

V カウンターナラティヴの新たなる展開
トパーズからグアンタナモ湾へ−オオツカの『天皇が神だったころ』と強制収容所 …マイケル・ゴーマン
ジーンズから語るアメリカ文化の変容−アメリカ音楽がジーンズに付与した精神性 …福屋利信
スナイダーと曼荼羅 (まんだら)−『終わりなき山河』の世界観 …塩田弘
ウラニウム鉱山とサーモン−アレクシーの詩に見るサバイバルの言説…松永京子
ベトナムからイラクへ−戦争映画の継承と変奏 …的場いづみ
〈語りえない〉出来事を語る−フェダマンとアビッシュのポストモダン・ホロコースト文学…新田玲子

あとがき …新田玲子 
索引 /執筆者紹介 384頁 税込価格\3,570
   

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