4月30日例会

関東支部4月例会プログラム

日時: 2011年4月30日(土)
会場: 成蹊大学9号館2階
〒180-8633 東京都武蔵野市吉祥寺北町3-3-1

ワークショップ(12:30-14:30)
1.英米文学部門ワークショップ;
     名作を読む「テネシー・ウィリアムズ生誕100年――『地獄のオルフェウス』(1957)再読」
(司会・講師)相原直美(千葉工業大学准教授)
(講師)外岡尚美(青山学院大学教授)
(講師)日比野啓(成蹊大学准教授)
(講師)真野貴世子(成蹊大学・院)


 本ワークショップでは今年生誕100年を迎えるテネシー・ウィリアムズの『地獄のオルフェウス』(Orpheus Descending )(1957)を再読/再考する。1944年に『ガラスの動物園』を携えて彗星の如くアメリカ演劇界に登場したこの劇作家の作品は、アメリカのみならず世界中で広く親しまれ、彼の代表作――『ガラスの動物園』、『欲望という名の電車』、『熱いトタン屋根の上の猫』など――に対しては、現在に至るまで、新たな視点を通じての再評価が活発に行われている。その一方で、代表作の陰に埋もれ、再読の価値がありながらも、その対象として取り上げられるチャンスを逸してきた作品も少なからず存在している。その一つが今回扱う『地獄のオルフェウス』である。この戯曲は、南部の閉鎖的で小さな町に降り立った一人の蛇皮のジャケットを着た男の登場によって、その田舎町に辛うじて保たれていた日常の平穏さが揺るがされ、町の住人達の心の奥に潜む暗黒の情熱と暴力性が徐々に迸り出される様を描いている。初演時にウィリアムズ自身が “ And so you see it is a very old play that Orpheus Descending has come out of, but a play is never an old one until you quit working on it and I have never quit working on this one, not even now. It never went into the trunk, it always stayed on the work bench …” (“The Past, the Present, and the Perhaps”)と説明している通り、この戯曲は、事実上のデビュー作である『ガラスの動物園』より4年早くシアター・ギルドによって上演された『天使たちのたたかい』(Battle of Angels) (1940)を、劇作家自身が17年間という長きにわたって推敲を重ね、大幅に書き直したものである。この作品は、興行的成功には恵まれなかったものの、後年『蛇皮の服を着た男』(The Fugitive Kind)(1960)としてマーロン・ブランド主演、シドニー・ルメット監督で映画化された折、ウィリアムズ自身も脚本に参加したほど彼自身の思い入れの強いものでもあった。ここには、ウィリアムズ自身の劇作家としての変遷の軌跡や、ウィリアムズ作品の特徴的な要素が幾重にも編みこまれている。『地獄のオルフェウス』は、ウィリアムズ研究を未来へと押し進める上で、この記念すべき年に、新たな視点から再読するに足る十分な価値を備えた戯曲といえるだろう。
本ワークショップは二部構成で、第一部では4人のパネリストが各自の視点から作品を分析し、第二部では議論の輪をフロアーへと拡大し、この戯曲の新たな読みの可能性を共に探っていきたいと考えている。 (文責・相原)



2.英語教育部門ワークショップ:「学生の知的パフォーマンスを活性化する英語授業法」
   ①群読ワークショップ―声による表現と発見―(12:30- 13:30)
                      (講師)群馬大学大学教育センター准教授 草薙優加
   ②小説・映画・音楽を総合的に駆使する英語授業実践ワークショップ(13:30- 14:30)
                      (講師)立教大学兼任講師        関戸冬彦

 大学のカリキュラムにおいて、「英語」という科目が果たし得る役割について考えてみる。英語が国際語としての覇権を得た観のある現状を考えると、まず第一に、外国語としての英語の運用能力を高め、ビジネスやアカデミズムの世界で使える英語を身につけさせるという役割があるだろう。これは、文科省や経済界のみならず、就職難の時代を生き抜かなければならない学生たち自身が望んでいることでもあろう。しかし、「英語」という科目を広く言語教育の一環として考えると、言語そのものに対する学習者の意識を高め、言語が果たし得る広範な可能性に目を啓かせる役割をも担ってしかるべきではないだろうか。言語が、その運用の仕方次第で、単なるコミュニケーションツールから自己の知的パフォーマンスを活性化させる起爆剤へと変容することを、可能な限り多くの大学生に体感、体得してもらう場として、「英語」科目が成し得ることは多いように思われる。
 そこで、今回の英語教育部門企画では、学習者の知的パフォーマンスを活性化させるべく工夫された英語授業法を二つ、ワークショップの形で紹介する。英語という言語が、小説、映画、音楽、言葉遊び、童話、演劇といった様々な表現形態と出会ったときに、学習者のモチベーションをどのように刺激し、その知性の動きをどのように高め得るのか、参加者の方々に実地に体験していただきたい。また、小説、映画、音楽、言葉遊び、童話、演劇などを授業で使ってみたいが、どう使えばいいのかわからないという方には必見のワークショップとなるだろう。

【講師】
● 草薙優加(群馬大学大学教育センター准教授)
タイトル:群読ワークショップ―声による表現と発見―
 このワークショップでは、群読(ことばや文章を二人以上で行う声の表現)の英語教育への応用を紹介します。早口ことばや伝承童謡を用いた群読ウォーム・アップから詩の群読脚本づくりまでを体験し、言語スキル(プロソディ、発音)の向上、作品理解、学習者の自己表現、創造力、コミュニケーション能力の向上、人前で声を出すことや協同学習に苦手意識を持つ学習者の指導、教室コミュニティの活性化等の教育効果が文学・言語教育の場でどのような<学び>をもたらすのか考えてみましょう。

● 関戸冬彦(立教大学兼任講師)
タイトル: 小説・映画・音楽を総合的に駆使する英語授業実践ワークショップ
 学生が英語を習得し運用することを促進するためには学生自身の興味を喚起する必要がある。このワークショップではそうした観点から学生が英語に、英語を通した世界に、より興味を持ちやすいと思しき素材、小説・映画・音楽を駆使する「英語」の授業内容を、実践例を交え、その場で体験していただきながら紹介する。例えば小説『ライ麦畑でつかまえて』とジョン・レノン、映画『卒業』とサイモン&ガーファンクル、など。短い時間ながらご参加の方々への「明日の授業に架ける橋」となれば幸いである



研究発表(14:45-15:45)

シンポジウム(16:00-18:30)
「学会は研究・教育のために何ができるか?――日本英文学会関東支部の将来構想」

(講師)東京大学教授  丹治愛
(講師)慶應義塾大学教授 巽孝之
(講師)学習院大学教授 中島平三
(講師)立教大学教授  菊池清明
(講師)東京大学教授  斎藤兆史

(司会)東京女子大学教授 原田範行
 学問研究を推進する<学会>は、実に千差万別です。医学系のように、専門職の認定を行い、研究成果報告が行政や教育に直接影響するといったものもあれば、純粋に学問研究の成果発表の場としてのみ機能しているものもあります。海外や社会との連携を強めている学会もあれば、そうでないものもある。談論風発を重んじて会費さえない学会もあれば、法人としての組織を整備した大規模な学会もあります。
 2011年4月から、財団法人日本英文学会は、支部を基盤とする組織に完全移行し、一般財団法人の認可を新たに受ける予定です。今回のシンポジウムは、この制度改革にあわせ、学会とは何のためにあるのか、会員が期待しているのは何かということを改めてよく考え、日本英文学会関東支部の新たな出発に役立てようとするものです。
 研究費確保や発表機会の提供といった学問的営為の支援、政府への提言、大学はもちろん初・中等教育などとの関わり、出版をはじめ文化産業等との関係、海外研究機関との交流など、学会にできることは少なくありませんが、このシンポジウムでは、たんなる理想論ではなく、今後の日本英文学会関東支部の活動への具体的実質的な提言をまとめて行きたいと考え、学会が包摂する各分野を先導する方々に講師をお願いしました。そして、フロアの皆さまとのディスカッションを特に重視すべく、通常より時間を30分長くしました。新年度が始まって大忙し、「自分の授業と研究だけで精一杯、学会なんてやっていられるか!」と思っていらっしゃる方も多いかも知れませんが、そういう方々にも是非お越しいただきたいシンポジウムです。(原田)

野暮のすすめ 丹治 愛
 大学の内外で逆風が吹いている状況のなかで、日本の英文学研究が今後発展していくためには、後進を育成する英文学教育についての組織的検討が欠かせない。具体的には、理念・目的、カリキュラム、シラバス、授業の方法、教材といったさまざまなレベルで、現在の英文学教育を総括しつつそれを向上させると同時に、そのメリットを社会に発信していく組織的な努力が必要なのではないか。自分たちの営為を正当化し、文学教育を方法論化するなんて、なんて野暮かと思いつつ、関東支部にはあえて野暮を求めたい。 

アメリカ文学研究の 21世紀的課題  巽 孝之
 9.11以後、北米のアメリカ研究は脱アメリカ的視線を尊重し始めた。その過程で生まれた北米の Journal of Transnational American Studies はじめ複数の国際学術誌の編集委員を務めて実感するのは、国境の交錯するところに構築される新たな外国文学研究の可能性である。英語でこそ生きる研究とは何か、日本語でこそ深く味わえる研究とは何かを見定める批評基準は、博論・研究書公刊戦略以上の文脈において、いまこそ再検討すべき話題ではあるまいか。

会員であることの付加価値 中島平三
 学会には、学術的に意義があると共に会員にとって「付加価値」となるような方針や事業の策定が望まれるのではないだろうか。会員が積極的に参加するには、事業が会員にとって魅力的であり、付加価値を生むようなものである必要がある。かつて日本英語学会を運営するに当たり、「国際化」「研究領域の拡大」「社会貢献」という方針を出した。こうした方針のもとでの会員の活動が、会員(及び学会)に求められる「自己評価」(研究の質、国際性、説明責任、実益性など)に応えられるものと思われるからだ。   

言語・文学研究のゆらぎとひろがり 菊池清明
 言語や文学にのみ視座したアプローチだけでは理解しえない側面が、これまで看過されてきた研究課題であるのなら、他分野の視点から文学テクストを読み解くことの重要さを革めて再認識しなければならない。新たな方法と意識によってこそ、テクストの読みをさらに深め、豊かにする可能性が残されているのだから。言語・文学研究のゆらめく現況には、自己限定したディシプリンとまなざしに偏執することなく、水平にのびながら、垂直に鋭くつきささる立体的な方法論のひろがりを模索する寛大さが今求められているのかもしれない。                  

英語教育と英語・英米文学研究との有機的関係の構築 斎藤兆史
 2006年の全国大会の特別シンポにおいて日本英文学会も英語教育に関わっていく必要があるとの認識が確認されて以来、同学会および関東支部の英語教育部門の活動が充実してきている。英語・英米文学研究者の多くが英語教師を生業にしていることを考えると、英語教育の問題は英文学会においてより積極的に議論されるべきである。本シンポでは、英文学会の諸部門と英語教育との有機的な関係をどのように構築していくべきかを議論したい。

★懇親会 (18:45-)