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著者名 書名 出版社 出版年
安藤潔 『スコットランド、一八〇三年――ワーズワス兄妹とコールリッジの旅――』 春風社 2017

【梗概】
 詩人ワーズワスと妹ドロシーそしてコールリッジは1803年の秋にスコットランドに出かけている。この経緯はドロシーのRecollections of a Tour Made in Scotland, A. D. 1803、およびワーズワスの‘MEMORIALS OF A TOUR IN SCOTLAND, 1803’に結実している。この旅は英文学研究にとってはもちろん、英国の旅行文化を研究するうえでもでも重要なモデル・ケースと思われる。コールリッジにとっては生涯唯一のスコットランド旅行だったが、彼は病気がちで当初から出発間際までためらい、出発しても体調が思わしくなくて結局兄妹と途中で別れ、一人旅となる。彼はインヴァネスまで至った後急ぐように4週の旅を終え帰宅する。途中から一人になった結果、コールリッジの旅には、後の著作にも影響が及ぶ彼独自の特徴が生じることとなる。
 ワーズワス兄妹はコールリッジと別れた後もハイランド西部から中部を廻り、再びトゥロサックス地区に戻った後、スターリングからエディンバラに入るが、この後ローランド地方でサー・ウォルター・スコットとの出会いを果たす。
 著者は三人の足跡を辿って現地踏査を行い、本文中に自撮り写真を配置した。行きそびれた場所もインターネット等の地図やその他のサイトで確認しつつ研究してきた。
 第1章では、詩人たちの盛り沢山な旅程の内、ドロシーの「旅行記」を主な手掛かりとし、最初に三人が共に行った旅の部分、旅立ちからダンフリーズ経由グラスゴウからロッホ・ローモンド、トゥロサックスを旅した様子を検分している。第2章ではコールリッジのノートブックや書簡集を頼りに彼の一人旅を辿った。第3章ではワーズワス兄妹がコールリッジと別れたあとの二人旅を追った。兄妹はトゥロサックス地区を去り、アーガイル・アンド・ビュートを巡回し、アロチャーからインヴェラレイ、グレンコー、テイ湖に至るが、このあとドロシーの旅行記著作は様々な理由で中断し、生前出版されなかった原因のひとつにもなる。この著作中断についても考察した。再開後は、ひき続きハイランド中部、兄妹の旅した中で最も東北の地域となるケンモアからブレア・アソール、ダンケルドの旅程を辿った。この後兄妹はトゥロサックス再訪を決意し、ダンケルド、バーナムからキャランダーを経由し、二週前に歓待されたカトリン湖畔のボートマン一家に再会する。この後兄妹は未踏の場所も含めて存分にトゥロサックスを踏破し、ハイランズを後にキャランダーからスターリングに向かった。
 最終章第4章ではワーズワス兄妹がハイランドを後にし、この旅で最も重要なラスウェイドのサー・ウォルター・スコットを訪問する様子を辿った。兄妹はさらにローランド地方を旅しスコットとの親交を深め、彼と惜別の後グラスミアに帰る。以上文人たちの旅を、主にドロシーの旅行記やコールリッジのノートブック、書簡を頼りに、現代の観光地と対比しつつ検分した。

【目次】
はしがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・i
第1章 同行三人:ワーズワス兄妹とコールリッジの旅
      ――ケジックからロッホ・ローモンド、トゥロサックスまで――  ・・・・ 1
 T 旅立ちまで
 U カーライル経由ボーダー越え
 V ダンフリーズ:ロバート・バーンズ終焉の地
W ニス川河畔からグラスゴウへ
 X グラスゴウからロッホ・ローモンドへ
 Y ロッホ・ローモンドからトゥロサックス地区へ
 Z タルベットからアロチャー、ロッホ・ロングへ ――コールリッジとの別れ――
第2章 コールリッジのスコットランド一人旅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49
 T 一人旅に至る経緯
 U 一人旅 ―――アロチャー、タルベット〜グレンコー、バラチューリッシュ――
 V フォート・ウィリアムからフォート・オーガスタス、ネス湖東岸
 W インヴァネス、アヴィモア、ダルウィニー、ケンモア、パース
 X エディンバラから帰路へ
第3章 ワーズワス兄妹の二人旅
      ――アーガイル・アンド・ビュート以降のハイランズ―― ・・・ ・・・・97
 T アロチャーからインヴェラレイ、キルチャーン城、ダルマリー
 U ダルマリーからテイニュイルト、アピン経由グレンコー
 V グレンコーからテイ湖へ ――ドロシーの著作中断――
 W ケンモアからブレア・アソール、ダンケルド
 X ダンケルドからキャランダー経由再びトゥロサックスへ
  第4章 ワーズワスとスコットの出会い
      ――スコットランド・ローランズ、1803年9月――・・・・・・・・・・・153
 T スターリングからエディンバラへ ――旅を続けるワーズワス兄妹――
 U ロスリン/ ラスウェイド:スコット宅訪問
 V スコットとの旅 ――メルローズ、ドライバラ、ジェドバラ、ホーイック――
 W 旅の終わり
      ――テヴィオット、ブランクホルム、ラングホルム、グラスミア帰宅――
あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・191

主要参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・195

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